乳がんの手術後 ― 乳がん検診の情報をお送りすることで日本の女性を乳がんから守ります。乳がん検診伝道師 外科医 高橋 保正 ―

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乳がんの手術後

乳がん術後の定期検査についてお話します。

 

乳がん術後の経過観察は、3年までは3ヶ月ごと、5年までは半年ごと、10年までは1年ごとの検診を一般的には行います。

 

経過観察中の検査では、1年ごとのマンモグラフィーは推奨されています。

 

しかし、再発早期発見のためのCTや骨シンチや腫瘍マーカー測定などは、欧米のガイドラインや日本の乳がん診療ガイドラインでは推奨はされていません。

 

欧米では、医療費高騰を防ぐためにこのように術後の定期検査を控える方向にありますが、日本まで“右へならえ”をする必要はないとは、思います。

 

リンパ浮腫について

 

乳がん術後に悩まされている方が多いリンパ浮腫についてお伝えします。

 

リンパ浮腫は、乳がんの手術で脇の下のリンパ節郭清や放射線の照射およびがんの転移が原因でおきます。

 

こうした原因により、リンパ管がふさがったり圧迫されたりしてリンパの流れが滞ってむくみが生じるのです。

 

特に、腕から肩の方に流れるリンパ液が流れにくくなると、腕にリンパ液がたまって腫れ上がります。

 

リンパ浮腫は、乳がん術後2〜3年で起きることが多く、10年経過してもおきる方もいらっしゃいます。

 

なかなか完全に治すのは難しく、症状の軽減のために、リンパの流れを促す肩の上下運動やボールを握りしめる運動、そしてマッサージや弾性スリーブの着用などをお勧めしています。

 

せっかくしっかり乳がんの手術を受けたのに、こうした一つの後遺症に悩まされる方が多く、手術自体を後悔されてしまうかたも少なくありません。

 

今は、できるだけリンパ節を郭清しない方向で、私たち乳腺外科医は考えておりますが、リンパ浮腫を心配するあまり、がん細胞の詰まったリンパ節を取り残すわけにもいかないのです。

 

センチネルリンパ節生検という方法も、施設によっては行っております。

 

リンパ節は細菌やウィルスの侵入を防いでいるところです。これを郭清すると感染を防ぐ力が弱まります。

 

従って、日常生活の注意事項としては、

  1. 家事や庭仕事の時は綿の手袋や防水手袋をつける。
  2. やけどに注意する。
  3. 電気シェーバーを使用して除毛する。
  4. 深爪に注意する。
  5. ペットを飼っている時は、ペットに噛まれたり引っかかれないようにする。
  6. 手術した側の手での採血、注射、血圧測定を避ける。
  7. 手術した側の手や肩に鍼や灸をしないように注意する。

などがあります。

 

リンパ浮腫は、複合的理学療法といって

  • 医師との連携(医師の理解)
  • 治療
  • セルフケアの指導
  • 自己管理の継続的なサポート

の4点が大切です。

 

治療には

  • スキンケア
  • 医療徒手リンパドレナージ療法
  • 圧迫療法
  • 圧迫下での運動療法

の4つの基本があります。

 

リンパ浮腫は、早期に適切に対応することによって重症化を防ぐことができ、またある程度まで改善させることができるので、あきらめないでください。


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